第3章 【武田信玄・準備編】
街はずれの古いお屋敷に信玄は麗亞を連れてきた。
「こんな所に居たんですね。」
玄「あぁ、いくら呼ばれたとはいえ、敵が城下に堂々と居るわけにもいくまい。古い空き家となってたのを暫く借りているのだよ。」
空き家と言っても、手入れはちゃんとされていて、綺麗に使っている様子。信玄の人となりがわかるようだ。
「古い空き家なのに、ちゃんと綺麗にしてありますね、信玄様が手入れなさったんですか?」
玄「あぁ、私がやった所も有るし、幸が手入れをしているときもある。時々佐助もやって来て何かしているようだが。」
「ふふ、佐助君もですか?あ、謙信様はご一緒ではないのですか?」
玄「謙信は、城下の宿を取っている。酒を切らした時に近くに店がないと不便だと言ってきかないのだ。」
両手を上げてお手上げのポーズをする信玄
「ふふふっ、謙信様らしいですね。」
玄「佐助も、苦労が絶えないんじゃないか?」
家の裏手に回り、日当りのいい縁側に麗亞の風呂敷を置いた。
玄「ここに荷物を置いておくよ。姫」
ニコリと微笑む信玄にちょっとドキドキしつつ
「有難うございます。信玄様もお荷物があるのに私の荷物まで持って頂いて・・・」
玄「気にするな、力仕事は男の役目だ。か弱き姫に重い物を持たせる男は甲斐性なしだと言われるのがおちだ。」
信玄の男らしい気づかいになんだか胸がほんわりと温かくなる。
(気を抜くとすぐナンパする人だけど、でも、男の人としては本当に優しいひとだなぁ、信玄様は)
ふと、庭に目をやると、何やら大工道具やら材木やらが広げてあるのを発見する。見ると薄くて長方形の板が沢山切り出されてた。
「あの板で何か作るのですか?信玄様」
玄「あの板を加工してこういう形にするのだよ。」
そう言ってさらに切り出された板を見ると・・・持ち手がついているものになっていた。
「あ、これって・・・羽子板?」
玄「ご名答。君の時代にも羽子板はあるのかい?」
「はい、形は色々あったり派手なものもありますけど、簡単なものはこんな形で・・・。」
麗亞は、へぇーと感心したように羽子板を手に取って見ている。