第1章 *
よたつく鶴丸さんを支えながら、それでもガッチリ腕を掴まれながら夜道を歩く。コンビニでお水でも飲ませた方がいいなあと辺りを確認すると、いつの間にかそこはホテル街。あれ、と思う間もなく、覚束ない足取りなのにしっかりと意志を持って鶴丸さんにホテルに連れ込まれた。お酒のせいでほけほけしていたら、あっという間に部屋の中。大きなベッドが目に入った瞬間、これはまずいと一歩後退したのだが、未だに腕を掴まれているせいで逃げられずにズルズル引きずれられてしまう。
「え、ちょ、鶴丸さん…?」
「君が光忠を好きでも、俺は諦めないからな!」
「は…?」
「光忠のことなんてすぐに忘れさせてやる」
意味の解らない不穏な言葉の後、そのままベッドに押し倒された。
―――と思ったら、朝だった。
「…つまり、どういうこと?」
「お互い酔っててベッドにダイブした瞬間まあ意識がログアウトしたよねってオチ」
「…………」
「致してないけど、朝チュンしちゃったのは事実だからかなり気まずいんだよね…致してないけど!」
「…君って僕のこと好きだったの?」
「いやそれは鶴丸さんの勘違い」
「うん、だと思ったけど。でも、どうするの?顔合わせないわけにはいかないよ」
「そうなんだよねえ…」
はあ、と溜息を吐く。そしてちょうど目に入った時計に、そろそろ時間が迫っていることを教えられた。とりあえず誰かに話せてある程度は落ち着いたので、光忠とオフィスに戻ろうと扉を開ける。すると、明けた扉の先にはいつも通りの真っ白い彼がいた。
「あ」
「…あー、鶴丸さん、おはようございます」
「………」