第1章 *
「君が俺と寝た次の日に他の男と、しかも光忠と二人きりで密室から出てきたんだ。君が悪い」
「はあ!?」
「一晩寝たくらいで彼氏面するなということか? 驚きだな」
「……」
あんぐりと開いた口が閉じられない。どうやら鶴丸さんは、完全に誤解をしているらしい。それは私が光忠を好きだと思ってるとかそんな可愛いものじゃない。私と鶴丸さんが一夜限りだとしても関係を持ってしまったと、誤解しているのだ。これはまずいと弁解しようと慌てる私に、壁ドンのせいで至近距離のその美しい顔を近付けて鶴丸さんは言う。
「だが、俺は君の恋人になりたい。順番は違ってしまったが、その気持ちに嘘はないぞ」
「……はあ…?」
「職場恋愛上等。恋敵上等だな。見た感じ光忠に関しては君の片想いなんだろう? なら俺にもチャンスはあるな」
「あの、」
「酒のせいで一昨日の事をイマイチ思い出せないのが悔しいが、恥らってそのまま無言で帰宅するなんて君は存外照れ屋なんだな」
「いや、」
「だが心配するな。俺はちゃんと責任を取る。君のことを愛しているからな!」
「……」
ニヤリと笑って再び口付けてくる鶴丸さんに、もう何も言えなかった。果たして、一昨日の夜に致していないどころか二人して寝落ちしたなんて事実を知った日には、この人は一体どんな反応をするのだろうか。
とりあえず艶めかしい蜜色の瞳に囚われてしまった私が、本当に致してしまうのは…そう遠くない未来かもしれない。