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致してません!

第1章 *




その日は平日ではあったが、所属している部署内の飲み会だった。今まで抱えていた大きな企画が無事成功を収めたので、翌日が祝日という事で慰労会のようなものだった。これでようやく残業三昧の日々から解放されると、みんないつもよりハイペースで飲んでいた気がする。それは直属の上司であった鶴丸さんも例外ではなく、色白な頬を紅潮させて上機嫌にグラスを傾けていた。鶴丸さんの隣に座っていたのが私で、そこから少し離れた席に座って女性に囲まれていたのが光忠だ。光忠はこのルックスで部署内の女性の視線を釘付けにしているため、飲み会ではいつもの光景になっていたし、本人も困ったようにしながらペースは崩さずに、相手の気分を損なわせないまま上手く躱すのもいつもの光景だった。

それを見ながら、大変だなあと同情しつつお酒を飲むのもいつものことで。しかし、その日は何かが違っていた。

「モテる男は大変ですねえ」
「……君も、光忠みたいな男が好みなのか?」
「え?あー、たしかに光忠は格好良いですよねえ。見た目もそうだし、性格も悪くないし、気遣いできるし」
「…………」

正直、鶴丸さんはお酒に強いわけじゃない。ぶっちゃけ、かなり弱い。それは本人も自覚しているのだが、どうにも格好付かずに飲み過ぎてしまう事もしばしば。だから事情を知っている私や光忠が、いつもならそれとなく薄めたりやんわりとソフトドリンクを進めているのだが。その日に限って、ちょっと光忠を見ているうちに鶴丸さんはどんどんグラスを空けていた。気付いた頃には時既に遅し。見事お酒に呑まれた鶴丸さんが出来上がっていた。

それに気付いたのが、ちょうど飲み会がお開きになるタイミングで。一人で真っ直ぐ歩けそうにない鶴丸さんのお守を言い渡されたのが私だ。正直そこは光忠や他の同僚に頼みたかったし頼るべきだったのだが、何故が鶴丸さんが私の腕をガッチリ掴んで離さなかったし、私の家も鶴丸さんの家も店から徒歩で帰れる距離だった為、酔い覚ましに歩いて帰ればいいやと軽く考えていた。光忠は別れてからも心配そうな顔をしていたけど、私もお酒が入っていたので気楽に考えていたのだ。

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