第1章 *
翌日。
出勤と同時に、私は自分のデスクに向かう。今日からまた一週間、と気を引き締めなければいけないのだが、昨日の一件で既に疲れていた心身は何とも言えない。ぐるっと肩を回しながら椅子に座ると、後ろからぽんと肩を叩かれた。
「おはよ」
「ああ、光忠。おはよ」
「朝から随分疲れてるね。コーヒー飲む?」
「あー、もらうわ。ありがと」
同僚の光忠が淹れてくれたコーヒーは美味しい。有り難く頂戴しながらほっと息を吐けば、そう言えばと光忠が言う。
「昨日メールしたんだけど、見た?」
「えっごめん。充電忘れてて…」
告げれば、そうかと頷かれる。どんな用件だったのかを尋ねると、少しだけ言い難そうにしながらそっと口を開いた。
「いや、あのあと大丈夫だったかな…と思って」
「……あのあと?」
「………鶴丸さん、だいぶ酔ってたみたいだから」
それだけでお互いに意思の疎通が出来てしまう程度には、彼とは良好な友人関係だった。しかし内容はいただけない。私は周囲に誰もいないのを確認した後、始業までの時間をさっと見積もってから光忠を背を押した。空いた小さな会議室に、彼を押し込む。光忠も困惑気味だが、私は自分の身を滑り込ませてからバタンと扉を閉めた。
「光忠。単刀直入に言う。鶴丸さんと朝チュンした」
「ええっ…!?!?!?」
怪訝そうな表情から一変して、光忠の隻眼が驚きに見開かれた。無言で、どういう事かと問いかけられる空気を感じ、私も誰かに話して落ち着きたかったため覚えている範囲内で一昨日の出来事を振り返る。