第1章 一歩
「そんでさー私の担当する本丸って前任者が居たんだよね」
「……はい。まぁそうですね」
「え、何今の間。何か嫌な予感しかしないんだけど」
隣に座るこんのすけを見ると全力で私から顔を逸らしている。
「おい こんのすけや。お母さんの目を見なさい。お母さん怒らないからちゃんと正直に話しなさい」
「そう言う人は理由を話すと大体怒りますよね」
「時と場合と世間体によるからな」
じろりとこんのすけを睨み。答える気配の無いこんのすけに、私はゆっくりと大手を掛ける。
「こんのすけ、今正直に言わないときつねうどんの具にするぞ」
「すみませんそれだけは勘弁して下さい」
小さく背を丸めて土下座するこんのすけを写真に収めて満足したので今回は許すことにした。暫く待ち受けにしてイジり倒そう。
「只…現地に着いてからの方が納得がいくかと思いますが…」
「ふぅん…そう、分かった。それで良いわ」
そうして車に揺られ、抱っこをしたこんのすけのモフモフを堪能しながら本丸に着くのを待つ。