第1章 一歩
いつの間にか私は手汗をびっしょりとかいていた。全身の血の気が引いているかのように頭が嫌に冴えている。
未来を変える。それは、人一人の人生だけでなく、世界を変えてしまうことに繋がるかもしれないという事。
「極端な話になってしまったかもしれないけど、つまりこういう事だって分かったかな?」
教頭の問い掛けに私は静かに頷いた。それを確認した彼は、また先を続ける。
「なら、話は早い。実は、その禁忌を犯そうとする集団がいる。名は『歴史修正主義者』。それに対抗すべく政府は、特別な力を持つ“審神者”に協力を依頼している。そして、今回君達に審神者の適正が見られ、ここに呼んだんだ」
「き、教頭先生ッ。ちょっと待って下さい…適正が見られた、って、いつそんな検査?をしたんですか?私、身に覚えが…」
隣の三年生が恐る恐る聞いた。確かにそれは私も感じた事だった。私自身、そんな力の兆候らしき物もなかったのだ。
「この事実も審神者のことも、政府からの指示で関係者以外には厳則極秘だ。学校で知っているのも校長先生と私くらいだ。
なので表立っての検査は無いよ。毎年、身体検査の時にこっそりと調べているんだ」
真顔で話す教頭に、それは驚くべきなのか笑うべきなのかと問う勇気は無かった。一体どの検査が適正試験だったんだろう。知りたいような知りたくないような…。