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【刀剣乱舞】銘々取りゝ 我等は刀よ

第1章 一歩




「さ、さにわ……?」


聞き慣れないその言葉を反芻し、隣の三年生を見やるが、彼女も何の事か分かっていないようだった。
「突然言われても分からないのは当然だ。そこで、教頭先生からの説明を聞いてもらう」
校長は教頭先生、と小さく呟くと白髪頭の先生が無言で一礼し校長の横へ腰を降ろす。そこで私は彼が教頭であったことを漠然と思い出した。余り表舞台に出ることのない彼を覚えている生徒は少なかった。


「さて先ず…君達は、歴史は変えられると思うかい?」
唐突な教頭の問い掛けに、私達は顔を見合わせる事しか出来なかった。
「突然そんな事聞かれても困るか…。まあ、答えはね、歴史は変える事が可能なんだ」
「「「!!」」」
歴史を変える。そんな空想のような行為が可能だと断言されるが、にわかに信じ難い話だった。


「しかし、それは大きな禁忌だ。『歴史を変える』。それは人の人生を変えてしまう事と同義なんだよ。ある筈だったその人の未来を覆し、壊す事になる」
教頭の重い声に背筋が粟立つ。ピンと来ない筈の話に、何故か私は触れてはいけない物に触れたような恐ろしさを感じた。




「そうだね…一つ例え話をしよう。まあみんなも聞いた事あるような話だろうけどね。
ある所にA君がいた。勤勉で親孝行者の優しい男の子だ。そしてまた同じく時をして過去と未来を行き来出来る不思議な力を持つBさん。

ある時いつものように過去に行きぶらぶらと遊んでいたBさん、何と道ですれ違った綺麗な女の人に一目惚れしてしまうんだ。彼と彼女は互いに惹かれ合う。
しかし、Bさんはずっとここには居られない。Bさんは彼女に別れを告げて未来へと帰った。
未来へと帰って来た彼は愕然として立ち竦んだ。何故なら、その未来の世界の景色は全く違っていたんだ。簡単に言うならば一回り遅れている日本になっていた。

ここで思い出して欲しいのが冒頭で話したA君の存在。実はA君は日本の大きく発展させる上で重要な役を担う存在だったんだ。そう、察しが良い人は気付いているだろうね。
未来で恋した女の人、それは将来A君のお母さんになる筈だった人なんだよ。しかし、A君のお母さんはBさんに恋をした。それにより、かつて恋したBさんに似た男性に惹かれ、A君のお父さんになる筈だった男性とは結婚しなかった。



─────結果、A君は産まれてこれなくなったわけだ。」



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