第4章 地獄を見る
「結構広い離れだよなー。ホント、私が使うの勿体無いぐらいだぜコレ」
「じゃあたまに俺が来てあげるよ。そしたら寂しくないし良いでしょ?」
「おっ。女子会しちゃう?パジャマパーティーしちゃう??」
「パジャマパーティー?何それ楽しそう!」
背景にお花とキラキラエフェクトを放出させて興味を示す清光は、驚く程可愛いかった。見てよこの可愛い生き物。多分その内ワシ心臓爆裂して救急搬送される。
台所を過ぎて行くと、障子の続く部屋が現れた。その部屋の向かいは庭続きで、石燈籠に石畳、そして木があり、荒れているとはいえその絢爛さが窺えた。植えてある木は、栄養が足りないのか枯れているが、手入れをすればきっと立派に芽や花をつけるだろう。
「清光 この部屋は、」
─────パシッ
障子に手を掛けた私の手を、突如清光が制した。一瞬呆気に取られたが、掴まれた手首から 彼の体が震えていることに気付き、冷静さを取り戻す。
「あっ、ご、ごめん…」
「清光、どうしたの?」
「そこ……」
「え?」
「そこが、前のヤツの、部屋だよ」
「!」
掛けた手を弾かれたように引っ込めた。今私が開けようとしていた障子。
まさにそこが、嘗てこの本丸の主が寝食をし 生活をしていた、清光が“鬼の棲家”と皮肉した場所。
冷や汗が首筋を伝う。開けてはいけない、触れてはいけない物を目の前にしている事実にぐらりと視界が揺れる。
清光が語ろうとしたがらない“過去”。私はそれを無理に聞こう等とはしない。詮索もしない。彼ら刀剣男士達の口から話してくれるのならば、その時を待つつもりだ。
しかしそれは、半分建前の様なもの。
────私は、それを知る勇気がないだけだ。それを受け止め切れる自信が無い。