第4章 地獄を見る
第4章 『地獄を見る』
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本丸当主の審神者には、政府から必ず部屋が支給される。そこで私達は寝起きをし、審神者として生活をする。
スタンダードは大部屋1室なのだが、審神者の好みにより各本丸で異なってくる。茶好きの審神者は離れの茶室を使用したり、増築したり。「そもそも必要ない」と言って 大広間で仕事をし、就寝は刀達の部屋をローテーションしている審神者もいる。つくづく奔放である。
ちなみに、ウチの本丸はというと、離れの1棟丸々だった。
「まさかの…なんか複雑だなー。良いのか私なぞが」
「良いじゃん良いじゃん、丸々自分の物なんて。それに主は女の子なんだし、男の居ない離れのほうが生活しやすいんじゃない?」
「それに関しては今 全私での校歌斉唱のスタンディングオベーションが起こっている」
「無駄過ぎる程に壮大だね」
刀剣男士達のいる棟と離れを繋ぐ渡り廊下を進んで行く。清光が時々訪れていたおかげか、離れの通路には埃が少なかった。
「へー風呂にトイレに、あっ!台所まであるじゃ~ん」
「小さいけどそこそこ使えるよ。夜食とか作る分には良いんじゃない?」
「うむ。大学生が借りる1Kの部屋の とりあえずの最低限が揃ってる台所みたいだな」
「絶妙に生々しい例えだからやめてくんない?」
1Kの部屋の台所よりは広くて使い勝手は良さそうなので、この例えは当てはまらないかもしれない。
なんと此処には食器棚があるのだ。つまりは食器乾燥機に置きっ放しなくて良い。実用性一辺倒な食器で妥協せず、趣味の食器を買える。これ程素晴らしいことがあるのだろうか。いやない!収納が多いとは自身の可能性を意味するのだ。
「清光、覚えておけよ。収納の広さは自分の世界の広さだと」
「は、はぁ?」
お前もいずれ知るだろう。服や本を置けるスペースが無くなった時の絶望を。自分の好きな物を切り捨てなければならない時の苦しみを。