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【刀剣乱舞】銘々取りゝ 我等は刀よ

第3章 この本丸には嘗て鬼が居た



“やすさだ” という言葉には聞き覚えがあった。最初出会った時に教えてくれた“大和守安定”君。目の前の彼こそ、大和守安定その人なのだ。


丸い大きな青い瞳に、少し下がった目尻が彼に柔らかな雰囲気を与えている。爽やかなよく晴れた夏の日のような彼は、いかにも純朴な好青年という印象だ。外に跳ねているふわふわの黒髪を高く一つに括っていて、まるでポメラニアンの尻尾のような愛らしさがある。

しかし、一際目を引いたのは、彼の左目の下に泣きボクロと白い襟巻。
今彼が着ている内番の着物の襷(たすき)やデザイン。それは、清光と彼は所々似通っている。確か、清光と同じく彼は沖田総司の元に居たらしい。その影響もあって、彼らは“対”になっているのだろうか。


大切な主の元の時間を共にした間柄。苦楽を共にした切っても切れない絆。お互いに大切な相手、の筈だ。



それなのに、清光の表情は何故か酷く曇っている。



「清光 平気?!怪我してない?!」

突如 清光の肩を掴み、安定君は揺さぶって問い掛ける。何の脈絡も感じられない安否確認に激しい違和感を覚えた。清光は呆れ返った様子で溜息を吐くと、覇気無く答える。


「大丈夫じゃなさそうに見える?」

「え、ん、いや見えないけど、」

「じゃあ良いじゃん。肩痛いんですけど。離してくれる?」


清光は冷えた声で言い放つと、肩に置かれた安定君の手を払った。その行動に思わず動揺する。当事者の安定君に至っては、理解が追い付かないのか目を見開き、払われた手と清光との間で瞳を右往左往させている。


「ちょっと清光、どうしたの?!なんで急にそんな…」


何を言っても清光は答えず、目の前の安定君を見詰めるばかりだ。彼は清光の目を見詰め返すが、徐々にその大きな瞳がふるふると揺らめき始めた。不意にその頭が緩りと動き、私を見据える。





「お、お前……お前ぇッッ!!」

「?!」

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