第2章 台所事変
『清光の親友』という立ち位置までいきたい私としては凄く嬉しい一言に照れた鼻先を掻くいていると、清光が遠くを見詰め口を開く。
「まぁ、別に主のこと信用したわけじゃないけどね」
その一言にギシリと動きが止まり、彼を見る。こんのすけは息を呑んだ表情で目を泳がせていた。清光は箒の柄先に顎を突き、無表情で先を続ける。
「初めて会ったばっかでアンタの事よく知らないし、何が楽しくて俺と仲良くしたがってるのかも分かんない。正直やっぱ…不安だよ」
「……そう」
清光の言葉を黙って飲み込む。そう思われていた事にはあまり驚かなかった。
清光を含めたこの本丸の刀剣男士達は、前任者の審神者に不当たる扱いを受けていた。私のことを不安に思うのは当たり前の事だ。私自身、すぐに信用して欲しいなどとは思っていない。
信頼とは積み重ねていく物だ。簡単に築ける信頼など存在しない。仮に築けたとしても、それは突けば崩れるような脆い物だろう。そんな物は求めていない。欲しくなどない。ゆっくりと確かな足取りで作っていくつもりだ。
しかし、いざ信頼してないと言われると中々きつい。悪意を持って関わろうとしてないからこそ苦しい物がある。瞳がふるふると震え、視界が揺らめき始める。
「あー、掃除しなきゃ、ね」
目頭が熱くなった瞬間 慌てて清光に背を向ける。年甲斐も無く泣きそうになるのを堪える為 掃除に戻ろうとした時、背後から清光の溜息が聞こえた。
「ちょっと主っ!あからさまに落ち込んじゃって…。最後までちゃんと聞きなよ」
「へ?」
全くもう、と清光は呟くと、半ば呆れた顔で後頭部を掻き毟り息を吐く。