第2章 台所事変
「ほらっ!清光キリキリ働きな!」
「はぁ〜いはい。分かってますって」
危険物質X(豚汁)を倒した後、私と清光は台所復興に取り掛かり始めた。清光には床を掃いてもらい、私は流しや釜戸周りを水拭きする。他に鍋や皿も埃を被っているので拭く予定だ。
「はぁ〜〜主ったら可愛い俺をこんな風に扱うなんて酷いな〜」
「なーにを生意気な〜。可愛いお前だからこそ厳しくしてんのよ」
“可愛い子には旅させよ” “獅子の子落とし”。
先人達も涙ながらに可愛い我が子を厳しく育てているのだ。私だって鬼級に可愛い清光に掃き掃除をさせるなんて本気で生ゴミ投げられる行為じゃないかと思ってる。
「えーホントー?」
「ホントホント」
「えへーしょうがないなー。じゃあ頑張っちゃおかなっ」
清光は嬉しそうにほんの少しはにかむと、照れ隠しのように再び床を掃き始める。
不意打ち同然に“可愛い”の塊が豪速球で投擲され、心臓に多大なるダメージが与えられた。何だお前 本当可愛くて萌えが口から出そう。お前本当は刀じゃなくて聖母か何かだったんじゃないの。
「お二人とも…。すっかり仲良しですね」
それまで黙って後ろで私達の様子を眺めてたこんのすけが不意に口を開いた。
「えっ、そう?」
「はい。今日が初対面同士とは思えないほど」
思わず聞き返すと即答で断言される。自分では私達の関係が客観視出来ない為、何とも不思議な気持ちだ。
「まぁ、傍から見ると凄い仲良しに見えんじゃない?俺たち」
「マジか! えー凄い嬉しいな〜それ〜」
妙に照れくさくなり頬を掻く。清光にまでそう言われるとちょっと実感湧くね。