第2章 台所事変
「いい?いくよ?」
「うん…」
鍋を引っ掴み 一気に流しへと運ぶと勢い良く中身を空ける。
「「ぐあああああああああああああッ!!」」
手狭な場所から広い空間得た液体兵器が本領を発揮する。一気に悪臭が放出され、鼻がひん曲がりそうな程に臭い。更にドロドロした密のある液体が流しに落ちるビジュアルと音に視覚的にも攻撃を食らう。
「あ───ッッ!!クッセッ!!クゥッセ!!鼻鼻鼻鼻ぁあ゛ぁ───ッッ!!!」
「喉!!喉痛い喉痛い!!息出来ない────ッッ!!!」
軽い阿鼻叫喚。
「主早く!早く全部出しちゃって!!早くッッ!!!」
「わーってるよ!!」
ボトボトを音を立てて落ちる嘗て豚汁だった物を鍋から全て除去する。そしてシンクに残ったブツを水で一切合切洗い落とす。
仕上げに、排水口の網に残った豚汁の具と 排水口の水切りネットをゴミ袋に捨て、その口をキュッと固く結ぶ。こうして戦いに終止符が打たれた。
「やっと終わった……」
「キツいねこれ…」
「ホントそれ〜…」
二人揃って深く息をついて笑い合った。しかし 私はある事実にふと気付き、表情が抜け落ちる。
「清光、アンタ全然ブツの始末手伝おうとしなかったよね」
「……」
「それどころかアンタ後半 数歩後ろで見てるだけだったろ」
「……」
「おい、顔を背けるな。おいコラ」
「……てへっ」
その0.02秒後、清光の脳天に拳が入ったのは言わずもがなだよねッ!