第1章 一歩
「立花様、黙っていたこと申し訳ありませんでした。
しかし、この本丸の刀剣男士達はそれぞれ心に傷を負い、今にも壊れそうな程に脆くなっています。口には出さずとも、きっと彼らは救いを求めている筈です。
どうか、どうか彼らをお救い下さい!どうかどうか…ッ!!」
こんのすけのは悲痛たる声を上げて私に頼み込む。しかし私は言葉を詰まらせた。すぐに返事なんか出来るわけなかった。
私が主で良いのか。私なんかに救えるのか。
きっと私がこの本丸の事実を受け入れたくなかったのは、その荷の重さ故だろう。
この本丸の主になるということは、彼らの全てを背負うという事だ。その悲しみも何もかもを。それは審神者としても、人としても未熟な私には余りにも重過ぎるものだ。
その時───お願いします、お願いしますと只管頭を下げるこんのすけの言葉に混じり、誰かの か細い声が通り過ぎて行く。
『たすけて』
弾かれた様に本丸を見た。
苦しみや憎しみの感情が余りに強く出ていた為に気付かなかった。負の感情の塊のようなその場所。
『かなしい』 『さみしい』
─────『たすけて』
憎しみの奥底で、彼らは助けを求めていた。
地獄の底から光を求めて手を伸ばしていた。
それらをどうして、見捨てることが出来ようか。
「──────こんのすけ、私、やる」