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【ヒロアカ】Short Short

第2章 相澤消太◆愛妻弁当希望



 個性を奪うことは出来ても、なまえを苦しめる悪夢をどうにも出来ない。
もどかしくて細い体を抱き寄せると、普段は相澤を拒むのに、身を委ねきって眠る。
相澤のシャツを掴んでくしゃくしゃにするなまえが少しでも安心すればいいと、強張った手の甲にそっと触れた。

 なまえが相澤の家に来て、何日か経った頃。
その日は二人で、ある場所に訪れていた。

「猫…それに犬も…」

動物園とは違うが、動物がたくさん居た。
猫や犬、ウサギやフェレット、ハムスターといった小動物や、大きな亀まで。

「ここの動物は、飼い主を失ってここに来た」

相澤が説明してやると、なまえは黙りこんでしまった。
わたしと同じだけれども、この子たちには罪はない。
わたしの罪は…。

「ペットショップとは違うが、その、猫飼いたかったんだろ?」

相澤の言葉に、なまえははっとする。
それは、プレゼントマイクに話した、両親との約束の話。
気まずそうに頬を掻く相澤は、どんな思いで今日ここに来たのだろう。
様々なことが、なまえの胸をいっぱいにする。

「わたしの誕生日にね、猫を飼うって、お父さんとお母さんと、約束したの」
「…ああ」
「わたしっ、名前も決めてっ…それでねっ…」

とうとう泣き出したなまえの背中を、相澤が優しく撫でる。
この時はじめて、二人の心が通じ合った。


 なまえの朝は慌ただしい。
制服に着替えて、飼い猫のペロの餌をやり、二人分の朝食と弁当を作るのだ。

「シャーーー!」
「どうしたの?ペロちゃん」

ペロが威嚇すると、なまえの腰に腕が回った。

「消太!もう、邪魔!」
「冷たいなあ、なまえ…ん~?」
「ちょっ、やめてよ痛い!」

首筋にジョリジョリ髭を擦り付けるのは、迷惑すぎて訳が分からない。
ペロに足を噛まれた消太の体が離れた隙に、思いきり押し退ける。

「消太のお弁当無しね」
「えっ…アイタタタペロ痛い!痛い!!」

ソファーに退散した消太は、わざとらしく哀愁を漂わせている。
それを無視して、なまえはさっさとテーブルに朝食を並べた。

「ペロはなんでこんなにパパに噛みつくの?」
「さぁね~ペロはお姉ちゃんがいいんだもんね~」
「ミャアー」
「お姉ちゃんじゃなくてママだろ」
「誰がママよ」

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