第2章 相澤消太◆愛妻弁当希望
消太などそっちのけでペロを撫でていると、テーブルがバンッ!と叩かれる。
「ママもペロも冷たい!パパ、帰ってこないことにする!」
「はいはい、また学校に住み着くのね」
消太のこれにはもう慣れたもので、特に焦りもせずに弁当を包む。
「はい、お弁当」
「…週末には帰る」
「ん、行ってらっしゃい」
週末といえば、なまえの誕生日。
あの出会いから祝って六度目の、特別な日だ。
誕生日の当日、夜になっても消太は帰ってこない。
前日は何かの実習で敵が乱入して、消太は大怪我を負ったという。
なまえが見舞いに行こうとしたら、行方不明になったとの連絡が入った。
心配だが、家に帰る可能性もあるからということで、なまえは家で待っていなければいけない。
「ペロちゃん、消太いつ帰ってくるんだろうね…」
「ニャー」
寝転がっているペロの隣に寝そべる。
ろくに寝ていないせいか、横になるとやけに眠い。
目も開けていられなくなり、ついに眠ってしまった。
ガチャガチャと、玄関からする物音でなまえは目を覚ました。
「消太っ…!?」
慌てて玄関まで走ると、ミイラのように包帯をぐるぐる巻きにされた消太が立っていた。
そんな姿でも、なまえは消太だとすぐに分かった。
「消太…」
「遅くなったな。…これ」
小さい箱を渡して、消太はすぐに部屋に引っ込んでいった。
「消太、ごはん食べないの?…もう、ペロちゃん、これなんだろねー」
箱を開けると中に更に箱が入っていて、蓋を開けば、中には指輪が輝いている。
なまえは一旦箱を閉じた。
「ん?えっと、これは~?」
訳も分からず消太の部屋のドアを開け、つかつかと歩み寄る。
「なにこれ!?」
「なにって…指輪」
「なんで」
「お前十六になったから籍入れようと思った」
「はあぁ!?」
つまりこれは、結婚指輪だというのか。
否、それはなまえにも分かっていたが、何故いきなり結婚することになった!?
「消太ってあたしの父親的存在だよね…?」
「いや、恋人」
その時、なまえの頭には六年前の記憶が過っていた。
『俺の彼女にならないか?』
「あれ、本気だったの!?」
「俺はいつでも本気」
どうやらとんでもない男に捕まったようだ。
なまえの運命やいかに!
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