第1章 心操人使◆世話焼き幼馴染み
次には、足が勝手に動いて階下のリビングへと向かっていた。
人使の個性だ。でも、どうして…?
なまえは目を見て訴えるが、人使はというと、何事もなかったかのようだ。
みょうじ家の朝食の席には、人使も必ず居た。
パンにジャムを塗る人使の手を、なまえはハムエッグを食べながら見る。
「なまえ、口に卵付いてる」
「えっ?」
「ん、取れた。ほら、パンも」
当たり前のように取った卵を舐めて、なまえの為のジャムパンを差し出してくる。
それはなまえが人使を兄と同等に慕うように、人使もまた、なまえを妹のように可愛がってくれているからだ。
なまえは、そう信じてやまなかった。
「なまえ、ヒトくん。そろそろ行かないと遅刻するんじゃない?」
「あっ、うん!ひと行こう!…あ、あのね、お母さん……」
人使には聞こえないように、母に耳打ちをする。
その間も、人使は先に行ったりせずに、なまえの隣に居た。
「ふわぁ~あ…」
「なまえ、まだ眠い?もう少し寝れば?」
肩を引き寄せられて、人使に寄り掛かる体勢になる。
大好きな人使の匂いがより近く感じられるから、なまえは朝の電車が好きだった。
人使の体は温かくて、すぐに眠ってしまう。
学校が終わって人使と帰ってくると、母が笑顔で出迎えてくれた。
「なまえ、朝に新しい服が欲しいって言ってたから、はい、お小遣い!土日にでも、ヒトくんと一緒に買ってきなさい。この子のこと、お願いできるかしら、ヒトくん」
「あ、ありがとう…お母さん……」
「はい、おばさん」
どうしてこう上手くいかないのかと、なまえは内心ため息をついた。
人使にも内緒で、大人っぽい服を買ってこようと思ったのに!
もう、子供っぽいなどと言われない為に。
「服欲しかったの?なまえ」
「う、うん…」
「じゃあ土曜日にでも行こうか」
人使は親切で言ってくれている。
一人で行けるよ、だなんて口が裂けても言えない。
そして土曜日。
人使となまえは、ショッピングモールに来ていた。
「わぁ~アイス!わんちゃんだ!…違う違う、服!」
早速他のものに気をとられるなまえだが、今日の目的は服だ。
人使は手強い、頑張って大人っぽい服を買わなくては。
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