第3章 人生最大の危機
「私に出来ることならなんでもします。弁償もするので許して下さい。」
「…なんでも?」
「私に出来ることなら…。」
「へえー。」
にやりと笑ってみせた青峰くん。なんだかちょっと、いや、すっごく嫌な予感がした。
「キス一回で許してやる。」
はあああ!?いや、無理!何言ってんのこの人!キス!?意味わかんない!
「なんでもするつったろ。」
「いや、それは無理。」
「俺の女になったんだからつべこべ言わずキスしろ。」
「青峰くんの彼女になった覚えはありません。」
少し前、中学生に絡まれた私を助けてくれた青峰くん。その際に今日から俺の女だとか言われた。拒否権はないと言われた。でも、それは青峰くんの勝手な申し出であって、それを承認した覚えはない。
「ほら、早くしろよ。」
肩を寄せられ、青峰くんとの距離が一気に縮まる。ちょ、待って!皆も見てないで助けてよ!部員達の視線を痛いくらいに感じるのに、助けてくれる人は誰もいない。
「ちょっと大ちゃん!何やってるの!?」
体育館に響いたさつきちゃんの怒声。青峰くんは舌打ちをして私の肩から手を離した。…助かった。
「遥香ちゃん、大丈夫?」
「う、うん…。」
さつきちゃんが来てくれなかったら皆の前でキスをするハメになっていた。そう思うとゾッとした。でも、初めて間近で見る青峰君の顔に不覚にもときめいてしまった。これだからイケメンは困る。
事情を察したさつきちゃんに青峰くんは、体育館に写真集を持ってくる大ちゃんが悪いと一喝入れてくれた。そう、その言葉を待っていた。
こうして体育館での公開キスを免れた私はホッとした筈なのに、ドキドキが収まらなくて、どうしたものかと思い悩んでしまった。