第3章 人生最大の危機
逢崎遥香十六歳。ここ桐皇学園体育館にて人生最大の危機を迎えていた。
目の前には、見るからに不機嫌そうな青峰くんと、それを目の前にして正座をする私。その二人の間にはびしょ濡れになって、全ページがくっついてしまった見るも無残なグラビア写真集。なんでも、青峰くんお気に入りのグラビアアイドル、マイちゃんの写真集で、なんと本人の直筆サイン入りならしい。
そんな青峰くんの宝物に、私は蓋のちゃんと閉まってないスクイズをぶちまけてしまったのだ。体育館に写真集なんか持ってくる方が悪い。ここはバスケをする場所であってグラビア写真集を見る場所じゃない。そう言ってやりたかったが、写真集の持ち主は青峰くんなのだ。そんな事口が裂けても言える訳ない。いつもだったら助けてくれるであろうさつきちゃんと若松主将は監督とミーティングがあるとかで体育館にいない。さつきちゃんと若松主将がいないとなると、傍若無人である青峰くんに意見出来る人はいない。つまり私は許してもらえるまで謝り続けるしか生き残る術がないのだ。
まあ、写真集さえ持ってこなければこんな事には…とは思ったけど、スポドリをぶちまけてしまった私が悪い。私の不注意が招いた結果だ。許してもらえないと思うけど謝るしかない。
「青峰くん、本当にごめんなさい。」
「あーあ。これ、俺のお気に入りのヤツなんだけど、どうすんの?」
「ごめんなさい。」
どうすんのと言われても、弁償なら出来るが直筆サインとか無理だ。ていうか、青峰くんはどうやって堀北マイちゃんのサインを手に入れたのか。まさかサイン会に並んだのだろうか。グラビアアイドルのサイン会に並んでサインをしてもらう青峰くんを想像したら、なんだか可笑しくて堪らなかった。それが顔に出てしまっていたのか、何笑ってやがると怒られた。