第7章 【番外編】Happy Birthday (2017)
そして、始まった映画は、私が気になっていた恋愛モノの映画だった。ついこないだ、この映画面白そうなんて言った時、青峰くんはそれをつまらなそうと一蹴りしてたのに。面倒臭いなんて言われた言葉はスッと消えて、嬉しい気持ちになった。
物語も終盤、ふと隣に視線を移せば、優しげな瞳で青峰くんが私を見詰めていた。それに思わずドキッとして、慌ててスクリーンに視線を戻した。てっきり爆睡してるかと思えば、なんでスクリーンじゃなくて、私の事見てるの?じんわりと熱を持つ頬に気付かないフリをしたが、優しげな青峰くんの表情が頭から離れなかった。
「やっぱ映画はつまんねーな。」
映画が終わると、大きな欠伸と共に背伸びをする青峰くん。
「じゃあなんで映画館来たの?」
「は?んなモン俺の勝手だろうが。行くぞ。」
映画館を出た後、最近駅前に出来たお洒落なカフェに案内され、席に着いた。てっきりマジバに行くのかと思ってたのに。可愛らしいインテリアの店内に不釣り合いな青峰くんはメニューを広げ、眉を顰めた。
「小難しい単語ばっか並んで何の食べ物か分かんねーじゃねえか。適当に好きなモン頼め。俺はなんでもいい。」
そう言ってメニューを投げつけてきた青峰くんに代わって、適当に何品か注文し、料理が運ばれて来るのを待った。
「ねえ、青峰くん。なんか今日変だよ。」
「あ?何処がだよ。」
休日に連絡も無しに家に来た所まではいつもの青峰くんだった。けど、その後からの行動は青峰くんらしくない。デートに映画にカフェ。カップルのデートとしてはこれが普通なんだろうけど…。
「だって、青峰くんらしくないよ。」
「別にいいだろ。」
注文した料理が運ばれ、話はそこで中断となった。青峰くんらしくない行動に疑問は拭えなかったが、食欲を唆られる匂いに、それ以上追求する事をやめた。