第4章 初デート
青峰くんが凄いって事は、練習を見て分かっていたけど、実際に相手にしてみて、改めてその凄さを実感した。手加減してくれているんだろうけど、一回もシュートが決まらない。全く青峰くんを抜けない。悔しいという気持ちは勿論あったが、悔しいと思う以上に、もっと青峰くんとバスケがしたい。一回でもいいから青峰くんを抜いてシュートを決めたいと思う気持ちの方が勝った。
「…やっぱり、お前いいな?」
「え?」
「男でも早々いねえよ、俺にコテンパンにやられて闘志を失わねえ奴。」
昔からそうだった。強い相手を目の前にすると、勝てない、もう無理だって気持ちよりも、もっとこの人とバスケがしたいという気持ちが勝ってしまうのは。
「なのに、なんでバスケ辞めたんだよ?」
「…凄くくだらない話になるんだけど、」
私が通っていた中学の女子バスケ部は強豪校と言われる学校で、毎年全国大会に出場していた。優勝こそは一度もした事が無かったけど、毎回ベスト八には残っていた。私が全中に出場した一年、二年の時もベスト八、ベスト四と割といい成績だった。けど、中学二年生の時、先輩達が引退した後に部活内で彼氏を取った、取られたという喧嘩が起き、チームの雰囲気は最悪に。仲が良かった筈のチームはそのくだらない喧嘩によってバラバラ。チーム内の雰囲気を何とかしようと努力したが、それは逆効果で、溝は深まるばかりだった。そんな部内の雰囲気に耐えられなかった私は大好きなバスケと大切だった筈のチームメイトを捨て退部した。
実にくだらない理由だったが、バスケが全てだった当時の私にはとても大きな事件だった。そんな理由でバスケを辞めてしまった事が恥ずかしかった。環境も変わったし、高校生になって、以前よりは大人な考え方が出来るようになった。でも、一度バスケとチームメイトから逃げてしまった私は再びバスケをするのが怖かった。それが高校でバスケ部に入らなかった理由。