第1章 約束 × 九条天 七瀬陸
「海ちゃん!!オーディション、受かった!!」
「本当?!よかったね!!」
「ありがとう!海ちゃんのおかげだよ!」
「違うよ、陸ちゃんの実力でしょ!」
「ははっ。ありがとう。」
その知らせは、何よりもうれしかった。
陸ちゃんの努力がひとつ、報われた瞬間だった。
そんな矢先、まさか、天が家に来るなんて予想外だった。
「陸ちゃんが、アイドルになったのは、当たり前だよ。人一倍、努力してきたんだから。」
すぐ横で、陸ちゃんが頑張ってきた姿をずっと見てきた。
だから、言えることだった。
「本当に…。海は変わらないね。
ねえ、もうひとつ、約束したこと、覚えてる?」
「……覚えてるよ。」
私は天と、ふたつの約束をした。
ひとつは、陸ちゃんをちゃんと見ていること。
もうひとつは、天以外を好きにならないこと。
「その約束は、守ってくれなかったんだね。」
「……。」
何も返す言葉がない。
「悪い子。」
天は、悲しげに苦笑をもらすと、私に唇を近付けた。
それを、条件反射的に既のところでかわすと、天は大きくため息をついた。