第1章 約束 × 九条天 七瀬陸
それから、陸ちゃんと一緒にたくさん遊んだ。
一緒にゲームしたり、いろんなところへ出かけたり、陸ちゃんの歌を聞いたり、ダンスを見たり、たまに勉強したり。
陸ちゃんと一緒に過ごす日々はとても楽しかった。
陸ちゃんといると、自分らしくいられた。
「陸ちゃん、いつもありがとう。」
「ははっ。急にどうしたの?」
「天がいなくなって、それでも今、こうして笑えるのは陸ちゃんのおかげだよ。」
心からの感謝の気持ちを伝えた。
「海ちゃん、あのね。」
「?」
「オレ、海ちゃんのことが好きなんだけど…。彼女になってくれないかな?」
陸ちゃんにそう言われたのは、天がいなくなって3年。
中学3年の秋のことだった。
「え?!っと…。」
「だめ…?」
陸ちゃんの気持ちはとても嬉しかった。
でも…
「天とね、約束したの。」
「?何を?」
「天以外のことは好きにならないって。」
「…海ちゃんは、天にぃのこと、まだ好き?」
「…うん。好き。」
だれが、なにを、どれだけがんばろうと
私のなかの天の存在の大きさは変わらなかった。
「ねえ、オレのことは?好き?」
「…好きだけど、違う。」
「わかった。」
陸ちゃんは、深呼吸をひとつして
「それでもいいから、彼女になって欲しい。」
真剣な表情でそう言った。
「…でも。」
「オレは、それでいいから。天にぃのことを好きなままの海ちゃんでいいから。」
そして、陸ちゃんに押し切られる形で、私は陸ちゃんと付き合うことになった。