第1章 約束 × 九条天 七瀬陸
天がいなくなって1年ほど過ぎたころ、天のいない生活に周囲は完全に慣れていた。
「海ちゃん、ちょっといい?」
「陸ちゃん…何?」
放課後、家へ帰ろうとした時だった。
陸ちゃんは私に声を掛けてきた。
「オレ、世界中の人を笑顔にしたい。オレも、天にぃと同じ道を目指すよ。」
真直ぐ前を見据えた陸ちゃんの声には、堅い意志がうかがえた。
「小さい頃から、天にぃの歌とか、ダンスが好きで、オレのなかのスターはいつだって天にぃだった。そんな天にぃに憧れてたんだよね。」
「!!陸ちゃんまでいなくなっちゃうの?!」
「違う!違うよ。世界中の人を笑顔にしたい。
だから、まず、海ちゃんを笑顔にすることから始めるよ。
その…応援してくれる?」
「陸ちゃんのことなら、なんだって応援したいよ。」
「ありがとう。」
陸ちゃんはそう言うと、昔と変わらない笑顔を向けた。
柔らかくて、優しい笑顔だ。
「よし、そうと決まれば!このまま公園行こう!!」
「え?!」
「いっぱい遊ぼう!!」
そう言うと、陸ちゃんは私の手を引いて走り出した。
「陸ちゃん、走ったら!発作…!」
「少し走るくらいなら大丈夫って先生にも言われてるから!」
笑顔を向ける陸ちゃんに連れられるまま、私たちは公園に行った。