第1章 約束 × 九条天 七瀬陸
「海ちゃん、どうしよう…天にぃがいなくなっちゃったよ…。」
翌日、陸ちゃんが我が家にやってきた。
泣き腫らした真っ赤な目。
「天にぃ、オレのことが嫌になったんだよ。」
「そんなことない、天は陸ちゃんのこと、とても心配してたよ。」
「海ちゃんは、天にぃが行っちゃうの知ってて、どうして止めてくれなかったの?!」
陸ちゃんのその言葉は、私の胸にずしんと伸し掛かった。
「私だって、止めたよ。離れたくなかったに決まってるじゃん!!」
大きな声でそう言うと、私は涙が止まらなくなった。
「天に会いたい…会いたいよ…。」
「あ、海ちゃん、ごめん…ごめん……。」
2人で嗚咽が漏れるほど泣いて、泣いて、泣いた。
陸ちゃんから、天は「九条」さんという人に引き取られたと聞いた。
そのまま、天は海外へ行ってしまったらしい。
それを聞いても、まだ、子どもの私たちにはどうすることもできなかった。
それからの日々、私と陸ちゃんの間に笑顔はなかった。
3人でいたときには、あんなに笑いが絶えなかったのに。
一緒にいると、お互い天のことを思い出して、暗い気持ちになってしまった。
それどころか、私は天がいなくなってから、笑った記憶が全くない。
笑顔の作り方さえ忘れてしまった。
抑揚のない日々は何を感じることもなく過ぎていった。