第1章 約束 × 九条天 七瀬陸
「えぇ?!天にぃと海ちゃん、付き合ってるの?!」
一番素直に、率直に驚いたのは陸ちゃんだったと思う。
「うん。付き合い始めたんだ。」
「わわー!どうしよう?!」
「陸はどうもしなくていいんだよ。」
「あ!そうか!!」
陸ちゃんの天然がいつも場の雰囲気を和ませていた。
「ねえ、じゃ、じゃあさ、ふたりでき、き、キスとかしたの?」
「しないよ!!何言ってんの!!」
「ボクはしてもいいけどね?」
「ちょっと天ちゃん!?」
「天にぃ大人だ!!かっこいい!!」
にやりと笑う天と、天に憧れの眼差しを向ける陸ちゃん、照れまくる私。
その空間は居心地が良かった。
陸ちゃんのお見舞いの帰り道、天は手を差し出した。
「海ちゃん、手をつなごう?」
「え?!はずかしいよ。」
そう言っても天が手を引っ込めることはなかった。
仕方なく、その手を握ると、天は嬉しそうに、大事なものを触るように優しくぎゅっと握り返してくれた。
「海ちゃん……だいすき。」
「はずかしいってば!!!」
天はまるで、私の反応を見て楽しんでいるようだった。
「子どもの頃からずっと一緒なのに、見たことない顔するんだね。」
「天ちゃんが恥ずかしいこと言うからでしょ?」
「あはは。そっか。」
「天ちゃんだって、見たことない顔してるよ。」
天が私を見る目が前よりずっと優しくなったのを感じた。
優しい天のことを好きになっていくのを止めることはできなかった。
天と付き合っていると
それまで以上に一緒にいる時間が長くなった
呼び方も、天ちゃん、海ちゃんから
天、海に変わるのに時間はかからなかった。
毎日、毎日、一緒に過ごしていた。