第2章 いよいよ開始! 男装生活~入学式~
HRも終わり、今日は解散。親睦を深めるために今からお昼ご飯に行くとか、遊びに行くとか、色んな人たちが居るらしい。私は3、4グループに誘われたけど、何となく全て断った。
「ねぇねぇ、平藤。」
急に呼ばれて吃驚した。このクラスの人たちは、私の外見のせいもあってか、名前を覚えてくれたみたいだ。
「なぁに?」
後ろを振り返ってみると、そこに居たのは席が隣の好青年男子。確か名前は―
「俺、今原健吾(いまばらけんご)。」
「うん、覚えてるよ。隣の席だもん。」
にこり、と笑えば今原くんはうわぁ~と目を覆った。
「平藤ってほんとに男? 女って言われても信じるくらい可愛い顔してるよなぁ」
「もう、男だってば。本当は、長い髪は鬱陶しくて切りたいし、この女みたいな顔も、高い声もコンプレックスなんだよ?」
少し怒ったように言ってみれば、今原くんは
「そうなのか? なんか悪いことしたな……ごめん。」
と頭を掻いた。
どこかの誰かさんとは違って素直で良い子だな。
本人には言えない印象を持ちつつ、大丈夫だよ、と微笑む。
「ありがとな。あ、でさ、俺たち今から遊びに行くんだけど、平藤も来ねぇ?」
「ごめんね、この後家の事情があって……。」
「そっか……じゃあ、また今度遊ぼうぜ! あと、燈弥って呼んで良いか?」
「うん。じゃあ僕も健吾くんって呼ぶよ。」
「おう! じゃ、またな~!」
健吾くんは小走りに仲間の元へ行き、教室を出ていった。そんな風にして一度に沢山の人が出ていくものだから、教室は既に閑散としていた。
「モテモテだね、燈弥?」
そこへ、楽しそうに声を掛けてきたのは三好さん。もとい英介。
「止めてよ英介。男同士だよ?」
「冗談、冗談。行こう?」
「うん」
纏めた荷物を持って教室を出れば、廊下に棗が立っていた。
「お荷物お持ち致します。」
「ありがとう。」
私は棗に、英介は自分の使用人に鞄を預けて、他愛の無い話をしながら校門へ向かう。
帰りは別々なようで、二台の車が駐車場に停まっていた。
「じゃあね、英介。また明日。」
「あぁ、また明日。……燈弥。」
乗ろうとしたところで英介に呼び止められる。そして、周りの目を気にしたのか、耳元で囁いた。
「今日、良かったよ。その調子で頑張って。」
うぅ、恥ずかしくて頷くことしか出来なかった……。
