第8章 人生って上手くいかない
土方さんが帰ったあとの部屋。
晋助さんに会うのが楽しみで足も軽くなる。
和紙や硯、書物などを直して身支度をし、急いで部屋をでる。
屯所を出る門へとあと数メートルという所で誰かに腕を引っ張られた。
一体こんな時に引き止めてくるなんて誰だと思って後ろを振り向くとそこに居たのは、
「沖田さん...」
「その嫌そうな顔、どうにかした方がいいぜ。殴りたくなる」
腹が立つほど綺麗な顔をした悪魔だった。
「龍宮城へと向かう道を止められたら誰だって嫌な顔しますよ。何ですか?」
思わず少しイラついた口調になる。だけどいつもの沖田さんとは違い、そのことについて気にしてる風ではない。
「あー、なんていうか、あれなんだよあれ」
いつもと違って沖田さんの歯切れが悪い。いつもはびっくりするぐらい流暢に憎まれ口が出てくるのに。
「あれってなんですか?私、今から出かける用事があるんです」
私の言葉を聞いて沖田さんは諦めたようにはぁ、と息を吐いた。