第6章 思い出したくないことほどよく思い出す
自分の手とはいっても学のない私に考え事を長く続けろといっても無理だ。
だから、私が頼りにしようとしたのは万事屋。
「何これ...」
私が向かった先にあったのは“万事屋だったもの”。
空から何かが落ちてきたみたいに屋根も潰れて、家の中もぐしゃぐしゃになっている。
銀さんや神楽ちゃん、新八くんは...?
それに、私の愛刀。
まさか万事屋と一緒に潰れたとか冗談じゃない。
そんなの笑えない。まだ近藤さんの親父ギャグのほうが笑える。
「すみません」
万事屋の下にある、“スナック お登勢”の戸を開ける。
万事屋には何回か来たことがあるけどここに入るのは初めてだ。
「あの、上の階の万事屋さんってどうなりました...?」
中にいたのはスナックのママ的存在であろう50代ぐらいの女性と猫耳のオ、オバサン(?)がいた(天人?)。
「アンタ、万事屋の客かい?」
「はい。そうです。万事屋さんに大事な物を預けてたんですが、その肝心の万事屋さんがこんなことになったいて...」
そう言ってスナックの天井を見上げる。
ママ的存在の方は苦笑い。
「アイツラハアンナ事ニナッテ当タリ前サ。
アンナ奴ラニ大事ナ物ヲ預ケタノガ運ノ尽キダヨ。諦メナ!」
猫耳の方はカタコトだった。
猫耳、おかっぱ、オバサン(?)...。
色んな意味でキャラが濃い。
「おい、キャサリン、そんなこと言うもんじゃないよ!
あたしゃアンタの大事なモンがどうなってるのかは知りゃしないが万事屋の場所なら知ってるさ。
お妙のところにいるよ。」
「お妙さんのところ...ありがとうございます!」
新八くんが弟だったはずだから万事屋ごと移動してるのかな。
礼を言って出ていこうとしたら引き止められた。
「アンタ、万事屋に一つ伝言があるんだが頼まれてくれるかい?」
「もちろんです。」
「家はぶっ壊れても先月と今月の家賃は貰うから覚悟しとけって」
「...はい!」
銀さん、家賃滞納中なのか。
まあ、あのぐうたらぶりじゃ仕方が無いのかもしれない。