第6章 思い出したくないことほどよく思い出す
「近藤さんが行方不明?どういう事ですかそれ。またどうせいつものように
お妙さんのところに行ってボコボコにされて、そのままキャバクラへ、とかいう流れじゃないんですか?」
「それも考えたんだがどうやら違うらしい。お妙のとこにも聞いてみたが、確かに近藤さんはいたけどそれからは何も知らねェって。
ここら辺のキャバクラやスナック、風俗店に聞いてまわったが近藤さんを見たやつはいねェらしい」
「それは大変ですね...」
文字の勉強が終わったあと、土方さんがそういえば、という感じで話題にしたのは近藤さんのこと。
そういえばで話していい内容じゃないだろうと思ったけど口には出さない。
「真選組総動員して探しにいったりしないんですか?」
「ん?ああ、しねェな。局長が行方不明って聞いちゃあここぞとばかりに調子に乗る輩が出てくるから大っぴらには言いやしねェさ。
真選組全員で探すなんてこたァそれこそ攘夷浪士共に触れ回るのと一緒だしな。
それに、近藤さんは戻ってくるさ。俺たちゃがそう信じてるから」
「そういうもんなんですかねェ」
男の友情、というか信頼感というかそういう奴なのか。
近藤さんをこの2日程見かけないと思ったら行方不明とは。
いつも屯所中に響き渡る、がはは、という豪快な笑い声が聞こえないのは少し寂しい。
私も勝手だけど少し自分の手で探してみよう。