第5章 イケメンの顔よりブスの顔のほうが覚えやすい
この後、晋助さんと少しだけ話をして別れた。
さすがに屯所まで送ってもらうわけにはいかないからね。
屯所に入り、私の部屋に向おうとすると沖田さんが中庭から縁側に寄りかかって寝ていた。
あの無駄に腹立つアイマスクをつけて。
「沖田さん、起きてください」
「ZZZ...」
「起きてください!!!」
「っせーな...、佐藤か?おきてんじゃねーかよ、見ろこのパッチリ開いた目」
「いや、それアイマスクの目です。沖田さんの目じゃないです。
それより、沖田さん今日は非番じゃないですよね、土方さんが朝少し愚痴ってましたよ」
無理やりアイマスクを外すと、沖田さんは縁側に座り直し、面倒くさそうに私を睨んできた。
「特別に土方が俺のことを愚痴ってた、ってのは忘れてやらァ。
後、俺は確かに非番じゃねぇよ。今日は仕事があるから寝てんだよ」
「それ、余計ダメなやつじゃないですか...。また、土方さんから大目玉くらいますよ。
こうしてる間にも江戸では事件が起こってるかもしれないんですから早く仕事してください」
「気にするこたァねェさ。今日は事件なんか起きないって夢で神様が言ってたような言ってなかったような」
「そんな曖昧な理由で仕事サボらないでください!
神様なんかあてにするもんじゃありません!
っんとに、沖田さんときたら...」
恨みがましげに沖田さんを睨むと、沖田さんはじーっ、と私の方を見ていた。
「...私の顔に何かついてますか」
「いや、なんか、オメー...男でも出来たか?」
「は?」
沖田さんの問いに咄嗟に浮かんだのは晋助さん。
けど、この人とはまだ2回しか会ったことが無いし、まだ、知り合い、というレベルだ。
「残念ながらそんな人いませんけど...、どうしてですか?」
「匂いが違う」
「匂い、ですか」