第5章 イケメンの顔よりブスの顔のほうが覚えやすい
「確かに話を聞いたときは腸が煮えくり返ったさ」
「...」
「だけど、オメーはどう考えてもスパイとかできる柄じゃねーだろ。
俺ァ今まで山ほど人間を見てきた。嘘をついてるかどうかなんざすぐ分かるさ。
オメーは嘘をつくのがうめェが俺には分かる。さっきのは嘘じゃなかった。
屯所に居候してるっつーのを言えなかったのも俺と気まずくなるのが嫌だから、違うか?」
晋助さんはチラッと私の方を見る。
全てを見透かすような目で。
「はい、...そうです」
この目に嘘なんかつくのは無駄だ。
例え、私が恥ずかしがって嘘をついてもそれに晋助さんはまたからかってくるだろう。
晋助さんと会うのは今で二回目だが、それで何個か分かったことがある。
晋助さんはSだ。
沖田さん程ではないけど。
時々見せるからかうような目や意地悪な言動。綺麗な顔の奥にある、隠れSって奴だ。
その証拠に私の言葉を聞いた晋助さんは、してやったり、みたいな満足げな顔をしてる。
「そこで、俺は考えた。一時の怒りに身を任せて、お前との関係を台無しにするか。
それとも、お前の話を聞いて、その後また考えるか。
後者にしたのは正解だった」
「...それは晋助さんも私と気まずくなるのが嫌だった、とういうふうに受け取っていいんでしょうか」
「さあな」
晋助さんははぐらかすように答える。
こういう所がこの人のずるいところだ。