第5章 イケメンの顔よりブスの顔のほうが覚えやすい
「確かオメー17だっつってたよな」
「...はい、そうですけど」
「男と触れ合う機会ぐれーあっただろ?それに、その顔じゃ山ほど男が言い寄ってくるだろうに」
「煉獄関で闘士になるまで、ずっと山の中で暮らしてたんですよ。育て親が、修行するなら山の中だかなんだか言って。
町に下りてくるのも月に3、4回だけでしたし」
多分、『あの人』がいなかったら、私も、同じ年頃の女子と同じように彼氏ぐらいいただろう。
私も、何物にも変え難い、狂おしいほど愛しい人が出来て、書物のような恋をしたかった。
母が遊女で自由に恋をすることが出来なかったからせめて、娘の自分は、とでも思ってるんだろう。
私の『恋』をしたいという気持ちは常人よりは強い気がする。
「そうだったのか。すまねェことしたな」
「気にしないでください。私もこのくらいの歳なら、ハグの一つや二つ軽くこなすレベルにならないといけないんで」
「そんなの気にしねーでオメーのペースでいいさ。」
「...怒ってないんですか?」
「...」
「私が、真選組の屯所で居候してたこと」
さっき、真選組のスパイなどでは無いと説明したけど、本当にスパイの人でもそう説明するだろう。
攘夷浪士の晋助さんにとって、私の言葉は簡単に信用出来るものじゃない。
現に、さっきの晋助さんの怒りは紛れもない本物だ。
今の様子だと、何故か怒りは収まったみたいだけど、それだけじゃなんだか納得がいかない。
我ながら厄介な性格だと思う。