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【銀魂】見つめる鍋は煮え立たない

第5章 イケメンの顔よりブスの顔のほうが覚えやすい


え、え、どういうこと。

心臓が、というか全身がバクバクいってる。


「あ、あ、あの、しん...すけ、さん」


生まれてこのかた男性経験が全くといっていいほど無いから緊張とかそういうレベルじゃない。

さっきまでのイライラはどこかへ吹っ飛んだ。

晋助さんの匂いに少し混じってる煙草の匂い。

晋助さん、煙草吸うんだな。

十数秒した後、晋助さんは手を離し、元の体勢に戻った。

良かった。これ以上されてたら体が蒸発してた。


「急に、どうしたんですか?」

「...なんでもねェ」


あなたにとっては何でもなくても私にとってはとっても重大なことなんです!

さっきまで、晋助さんは私みたいなイラつきじゃなく、確かな怒りを感じていた。

他人の私にも分かるぐらいだったから相当怒ってたはずだ。


「なんか...」

「なんか?」

「したかったから、した」


したかったからした?!

それで私のファーストハグは奪われたのか。

晋助さんは遊び慣れてるのかもしれないけど私は違う。

乙女ロードまっしぐらの正真正銘の乙女だ。舐めてかかっちゃ困る。

晋助さんはビックリした私に気づいて目を少し見開かせた。


「どうした、何をそんなに驚いてんだ」

「いや...、なんか、そんなに簡単に人を抱けるなんて凄いなと思いまして」

「言い方...。ハグって言え。つーかハグくらいお前もしたことあんだろ。...オメー、もしかしてハグもないのか」


私は何も言ってないのに、晋助さんは私の顔を見ていきなり笑いだした。

いつもの押し殺すような笑いじゃなく、口を開けての、ハハハッていう笑い方だ。

晋助さんと会ったのはまだ二回目だけど、こんな笑い方をするとは思わなかったからビックリした。
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