第5章 イケメンの顔よりブスの顔のほうが覚えやすい
全身が竦むような気がする。
でも、あの人を殺せるような目で見つめられたら誰だってそうなるだろう。
「お前、真選組の女だったのか」
「ち、違い――――――」
「誰の女だ。近藤か?土方か?それとも...」
「違いますっ!!!」
叫ぶと晋助さんは口を止めた。
私達の様子を痴話喧嘩か何かと思ったのか、周りの人達が物珍しげにザワザワしはじめた。
この人数になるとさすがに晋助さんに気づく人がいるかもしれない。
「場所、変えましょう」
返事は聞こえなかったが、歩き出すとちゃんとついてきてくれた。
少し歩くとあまり人のいない公園があったから、そこのベンチで話すことにした。
晋助さんがドカッと座り、人一人分開けたところに私が座る。
「私は真選組の誰の女でもないです。これだけは分かってください」
返事はない。
なんで恋仲でもない男の人にこんなこと言ってるんだろう。
心の中でため息をつく。
「煉獄関で闘士をしてた、って話しましたよね。
その時、そこで暮らしてて煉獄関が潰れたあとは住む場所も無かった訳です。
だから、家と職が見つかるまで真選組の屯所に居候させて貰ってるだけです。
断じて、私が真選組の密偵として晋助さんをスパイするためにやってきた、とかじゃないので安心してください」
また、返事はない。
さすがに温厚で名の通ってる私でもちょっとイラついてくる。
「黙ってたことは本当にすみません。言うべきでした。
でも、真選組の屯所で居候してたら攘夷浪士と話したりするのはダメなんですか?
...ま、普通は良くないですけど。
でも、私は晋助さんのこと攘夷浪士とかじゃなく、高杉晋助として接しています。
それでも、駄目ですか?」
晋助さんは横目で私の方を見る。
やっと反応してくれた。
晋助さんの体が動く。
手がこちらに伸びてくる。
「...え?」
晋助さんは私を優しく抱きしめた