第5章 イケメンの顔よりブスの顔のほうが覚えやすい
知ってる。絶対知ってる。
屯所か、どこかで見たはずだ。なら、隊士か?
違う。
「あ...!」
“攘夷浪士 高杉晋助”だ!
私が何かに気づいたのを察したのか、高杉晋助はクククッ、と喉を鳴らすように笑う。
「俺に気づいたのに逃げねェのか」
「え...助けてもらったのに逃げるとかそんなこと出来ないんで」
それなりの礼儀は弁えてるほうだ。
また、高杉晋助は独特な笑い方をする。
なんか、体がこしょばくなる笑い方だ。
思ったより背は高くない。
沖田さんと同じくらい?
「俺のこと、警察に連れていくか?」
試すような目で見てくる高杉晋助。
答えなんか決まっている。
「連れていきませんよ、面倒臭いですし。」
私の答えを聞いて目が一瞬輝く。
その目に射すくめられたような気がして一瞬体が固まった。
椅子に座るよう促されて、高杉晋助が座った隣に座る。
「あの...高杉晋助さん」
「晋助でいい」
「晋助さん。本当にありがとうございます。
このご恩は何で返していいのやら...。」
「別に礼なんていらないさ。
それに、アンタ、1人でも倒せたと少し残念がってるだろ」
心の内を言い当てられて、少しギクッとする。
確かに、久しぶりに体術も使いたかったし、日頃の鬱憤(主に沖田さんからの)も晴らすため、八つ当たりもしたかった。
「いや、でも、助けてくれたことに変わりはないですし!
お礼はちゃんとしたいです。いくらぐらいでいいですか?」
「金なんかいらねーよ。腐るほど持ってらァ。
...お前、何歳だ?」
突然質問されてビックリする。
「17、ですけど。」
晋助さんは17か...、と呟き、顎に手を添えて、考える素振りをした。
なんだかそれが晋助さんの容姿と合わせて凄く大人っぽく見えて、胸がヒュッと持っていかれるような感じがする。