第4章 勉強なんかクソくらえってなんか語感がいい
仮女中になって初めての休日のことだった。
私は部屋で机の上に、ノート、シャーペン、消しゴム、辞書を置く。
何だか弱点になりそうで人にあまり言ってなかったのだが、私は寺子屋に行ってなかった。
育て親の『あの人』には勉強を教えてもらったのだが、何分、その『あの人』が男も女もとりあえず武術学んどけば何とかなる、
とかいう性分で学問は申し訳程度にしか教えてもらえなかった。
だから、独学で頑張り、数学は自分でもかなりいい所までいったと思う。
問題なのは国語などの文学だ。
煉獄関のときに本が大層好きな人がいて、その人から沢山の本を貰った。
その人は確か良いところの出だったが、嫌気がさし実家を飛び出してこんな所にいると話していた。
だからなのか、貰った本は難しい物も多かった。
そんななか、数少ない私でも読める本の中にとても面白い本があった。
青春もののラブストーリーで、貰ってから何回も読み返した。
そこからか、自分の中で目標とかそれらしきものができて、それが“本を書く”というものだった。
誰に見せるまでもない、自分のためだけの本。
そのためには今の自分の頭じゃダメでもっともっと勉強しなくてはならない。
だから、空いてる時間に勉強することを決めた。
それなら、職と家を探せって話なんだけど。
いざ、ペンを手に取り、辞書を開いて書こうとした瞬間に部屋の襖がいきなり開いた。
開けたのは土方さんで、とても驚いた顔をしていた。
驚いたのはこっちだ。
「す、すまん」
そう言ってバタンと襖を急いで閉じる土方さん。
どうしたんだと思い、立ち上がって、襖を開ける。
「別に気にしてないです。どうしたんですか?」
「あー、隊士の部屋だと思って開けちまった。寝ぼけてたみてェだ。すまねェ。」
そう言ってバツの悪そうな顔をする。
土方さんがそんな事あるのかと思うが、今聞いても仕方が無い。
「本当に大丈夫です。別に大したことはしてなかったので」
「ふーん。そういえば、何してたんだ?ノートとペンが見えたが。勉強か?
女中もやって、職と家も探さなきゃならねェし大変だな。」
土方さんの言葉に少し驚いた。
私を害なしと判断したのか、最近接することが少なくなったから私に興味がないと思ってた。