第2章 お金より気持ちとか言うけど本当は気持ちよりお金
万事屋より先に屯所から少し離れた神社に向かう。
実はこの神社の軒下に刀を隠してある。
真選組に真剣を持ち込んだりなんかしたら没収されるに決まってる。
部屋に置いておくにしても隊士達の誰かが入ってきて調べないとも限らない。
土方さんのあの優しさも私の警戒心を解くため、真選組への警戒心を解くためだろう。
私を舐めて貰っちゃ困る。
軒下をのぞき込んでみると昨夜置いたとおりの場所に置いてあった。
手を伸ばして掴み取る。
刀を持ったまま立ち上がり、覗き込んだ時についた砂をはらう。
鞘から刀を抜くと、いつも通りの輝きを見せた。
この刀は母の一族で代々伝わってきた刀で、母が吉原に売られる直前に『あの人』に預かっていてほしいと渡したんだとか。
そんな大事な刀を『あの人』に預けるなんて母の気が知れない。
私だったら『あの人』に預けるくらいならそこら辺のゴリラの糞にでも渡した方がまだマシだ。
『あの人』の事を考えたら何だか腹が立ってきた。
右眉がピクピク動く。
私がイラついてるときの癖だと笑っていたのは『あの人』。
頭をぶんぶん横に振って脳から『あの人』を追い出す。
早く万事屋に行かなくては。