第1章 自称優男は大体外道
「私も、それが可能ならば是非、少しの間だけ居させて頂きたいです。」
「ここは男所帯だ。お前がいて屯所内で何も起きないってのは保証できねェぞ」
「大丈夫です!私、強いですから。」
そう言って腕に力こぶをつくる。
土方さんが心配してくれてるのは嬉しいけど本当に問題ない。
『あの人』から様々な格闘技、剣術を生まれてからずっと教わってきた。
大体の男の人よりは強い自信がある。
それに、この廃刀令のご時世に長刀なんか持ち歩けないから護身用に短刀をいつも懐にいれてる。
何かあったらこの短刀で身を守れる。
「だがそんな事言ったって―――――」
「しつけェ男は嫌われますぜ、土方さん。こいつの事なら他の隊士はもちろん、近藤さんからも許可貰えると思いやす。
まさか宿無しの女を放り出すなんて真似出来やせんよねィ?」
沖田さんの言葉を聞いて土方さんは悔しそうな顔をする。
「...分かった。ちゃんと大人しくしとけよ。」
そう言って私のほうをチラッと見る。
「ありがとうございます!」
出来るだけのめいいっぱいの笑顔で。
この真選組が後に役に立つのかもしれないからちゃんと愛想はよくしなきゃいけない。
「そういや、近藤さんは?」
「松平のとっつぁんとどこかに行きました。」
近藤さんとは真選組局長の近藤勲の事だろう。
帰ったら挨拶しないと。
「あ、そうだ土方さん。しばらくここにいるってなら勝手が分からなきゃ困ると思うんでこいつに屯所案内してもいいですかィ?」
「...ああ、分かった。ちゃんと案内しろよ。」
「へいへい、分かってやすよ。おい、行くぞ。」
さっさと部屋から出ていく沖田さんを急いで追いかける。
意外とこの人優しいな。
「なんか、ちかちゃんに対して沖田隊長優しいですね!」
「ちげェよあれは。あの総悟の顔はなんか企んでる顔だ。
災難だな、アイツも。総悟に気に入られるなんて。」
「は、はぁ...?」
面白そうに口元を綻ばせる土方の横で隊士達は訳もわからず首を傾げていた。