第1章 自称優男は大体外道
緊急事態発生。
私は今屯所の廊下で沖田さんに壁ドンならぬ刀ドンをされている。
ことの経緯は屯所を案内すると言って部屋を出た沖田さんと私だけど一向に案内してくれる様子がなく、ただ歩いてるだけだった。
声をかけても無視だし、私もそろそろイライラしてきた頃、いきなり沖田さんに腕を引かれ、壁に体を押さえつけられ、顔の横に刀が刺さった。
いつの間に刀を抜いたんだ
「おいてめェ。何考えてやがんだ?」
「は?」
ほんとに、は?だ。
案内してくれるって聞いたのにいきなり刀突きつけられるなんて全くそんなこと思わない。
「テメーの眼ェ見てりゃ分かるさ。家が無いのも、屯所でしばらく過ごしたいってのも本当だが、その裏で何考えてんのか知れやしねェ。」
「私だったらそんなこと思う相手をこんな所に置きませんけどね。」
第一、私が屯所でしばらく過ごすってのに沖田さんは賛成してくれた。
何考えてんのか分からないのはそっちだ。
「監視だよ、監視。危ねェ奴ってのは手元に置いてちゃんと見張っとかないと駄目だからねィ。
ただ、土方はどうでもいいが、近藤勲に手ェだしたら死ぬより辛ェ目に合わせんぞ」
沖田さんは殺意の他に何も無い眼で私をみる。
思わず体が強ばる。
固まっている私をみて沖田さんは思わず見惚れる様な顔でふっ、と笑う。
刀を壁から抜き、刀についた壁くずを軽くはらう。
「また壁に穴開けちまった...。山崎のせいにでもしとくか。
おい、案内してやりまさァ。付いてきな。」
元々、それが目的だったんですけど。
そんなこと口に出せるはずがないから、ようやく動くようになった体を動かしてスタスタと歩き出した沖田さんに黙って付いていく。
初めて沖田さんに会った時、「俺は優しい」みたいなことを言っていたのを思い出した。
どこが優しいんですがくそ外道。