第1章 足音と
あ。
足音。
誰か来る。
冷えた床に耳を当てると、確かな足...音..?
カツン、カツン。
だんだん近くなる、誰かの音。
でもそれは私の部屋を通り過ぎて、隣の部屋で止まる。
急いで次は壁に聞き耳を立てる。
重いドアが開く音がして、閉まる。
さすがに床より音は聞こえにくくて、
籠った声しか聞こえない。しかし話を聞くには十分な音量。
ふはっ奴等喰種の五感を舐めすぎなんだよ!
「...自己紹介をどうも、ジェイル。
喰種であれど一定の礼儀を尽くすのが私の主義だ。私の名はキジマ式」
「ここは喰種収容所コクリアだ」
喋っているのがたぶん、さっきの音の正体。
それでここがコクリアか。
「混乱して自分が何者か分かっていないようだ
....なに、すぐに思い出させてあげよう」
「楽しい時間の始まりだ_____リオくん、?」
「…ぇ」
リオ?
思わず声が漏れる。
リオは、私の友達。
女の子だと思われる様な名前に
くん付けなら、間違いないはず。
仕事で林をぶんぶん飛び回る私を見てた兄弟。
あんまり食べて無さそうだったから、
少しだけ肉を分けることにした。
幼心にかわいそうだ、と単純に思ってしまった。
私は少し気が向いただけだったんだけど、
おんなじ年位の男の子と、少し上のお兄さん。
「....ありがとう。僕はアズサ」
「こっちは弟のリオ」
「私は柚葉」
なんか有りがちだけど、
これが私とリオ兄弟の出会いだった気がする。