第3章 痛みと引き換えに
_________
店のドアを開くと、トーカさんと店長がいた。
「あ、おかえり。遅くない?迷ってないよね?」
「迷いました」
「え」
「それで、途中喰種捜査官に遭いました」
この事を言うのは少し躊躇いがあったけど、
会った事はきちんと言わないといけない気がした。
「え...!?どうやって逃げたのよ」
「...適当に15歳ですとか言って、道を聞いて帰ってきました」
「...リオくん、たまたま逃げられて良かったけど、
これからは大きめのアタッシュケースを持った人を見たら避けるようにね。気をつけるんだよ」
「...すいません」
諫める様には聞こえるが、これは優しい忠告だ。
マスクが出来ても、決して油断は出来ない。
もし戦闘なんかになったら、勝てるかわからないし。
「でもとにかく、無事で良かったよ。
ウタ君がマスク、来週には渡せるって言っていたよ」
それと、と店長は付け足す。
「さっき柚葉ちゃんから電話があったよ。
リオくんが帰ったらまた電話してほしいそうだから、早めにしてあげてね」
「はい、わかりました」
僕がいない間に電話があったのか。
またどうも、タイミングが合わない。
店奥の電話を見つけると、受話器を取る。
「え...っと。りれき...ヘルタースケルター。これか」
電話もまともに使いこなせないのは、困ったな...
2、3回コールを聞いたあと、
柚葉の声が聞こえてきた。