第3章 痛みと引き換えに
「君、少しいいかな」
背中から、声がかかった。
振り向くとそこにいたのは、黒いスーツに身を包んだ、背丈の大きい男性だった。
胸元には、"白鳩"のバッジが光って見える。
この人は.......
「(喰種捜査官)」
「こういう路地などには、よく“喰種”が出る」
「最近は収容喰種が大量に脱走するという事もあったばかりだ」
「あまり危ない道は避けるようにな」
「...あ。はい、気を付けます....」
「ところで君、学生かな」
足早に通りすぎようと思ったが、
そうも行かなかった。
今彼は何も怪しんでいない。
どうしようか...
「15歳です。学校は...事情で通ってなくて」
「そうか、立ち入った事を聞いて悪かった」
「ところで、これからどこに行くつもりなんだ?」
「えっと...迷ってしまって。ここ、初めて来たから。
駅の場所を教えてくれませんか」
「ああ、やっぱり迷ってたんだな。駅はここを進んで左だ」
「あ、ありがとうございました」
軽い会釈をし、逃げるように路地を抜ける。
緊張で心臓はとくとく、いつもより速く打っていた。
仕事現場以外にも当然ながら、捜査官は街をふらついている。
キジマだって、もちろんそこに含まれるのだ。
気をつけないとな。
今度こそ、道を覚え無事にあんていくへ帰れたのだった。