第3章 痛みと引き換えに
「...もしもし。あ、リオっ?...おかえり」
真っ先に聞こえた、いつも通りの柚葉。
電話越しにでも、その声音には心が落ち着く。
「うん、ただいま」
言葉の一つひとつに、柚葉の温かさを感じる。
「あんていくの人達、いいでしょ?
あ、トーカとかにリオすごいお世話されそう」
「あはは、もうたくさんお世話になってるよ」
「良かったー、割と馴染んでるみたいで」
「おかげさまで」
用事はなに?、と僕が本題を言い掛けた時。
ふと、僕は思い出した。
ウタさんの店で目を憂わせていたトーカさんの表情を。
『カネキくん以来だね』
そう言ったウタさんに何も反応せず、
その眼差しだけはただ曖昧だった。
知りたいと思った。
新入りの自分が簡単に踏み込んではいけないだろうけど、
知りたかった。
あの表情の理由を。
断られたらそれはそれで諦めがつく。
柚葉なら、知っているかもしれない。
「ねぇ、柚葉」
『____“カネキ”って人、知ってる?』