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Call me. 【東京喰種 JAIL】

第3章 痛みと引き換えに




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教わった磨き方で、慎重に拭いていく。
ある程度やると、トーカさんはうん、と頷いた。

「よし、それくらい出来たら問題ないんじゃない?」
「…問題は接客かな」

働く以上避けられない仕事の接客。
人前、しかも人間の前に立つだけでもまともに話せそうにない。

柚葉なら簡単にこなしちゃいそうだな。

「始めから教えないといけなそうね…」
「すみません…」
「大丈夫だよ、この魔猿がゆっくりと育ててあげるからね」
「そういえば、荷物が何もなかったなら  
 最低限の必需品は無いといけないわよね」

古間さんのノリを完全に無視する入見さん。
…僕は嬉しかったけどな。

「買う…でもお金もないし買い物なんて…」

服とかはどこかで盗んだ物だ。
買い物なんて当然したこともなかった。

「初めは色々買ったら店長に立て替えてもらって、
 後で返しな。ちゃんと自分で言うんだよ?」
「はい…」

またお世話になってしまうが、
無一文の今はトーカさんの言う方法しかなさそうだ。

会話を聞いて、ニシキさんもぼやく。
「必需品、ねぇ…あ、手ぶらだったって事はお前マスクも無いのか?」
「あ…ないです」

考えてみたら、ないものばかりだ。

マスクは念のため古いものを持っていたが、
いつの間にか着けなくなってしまった。

その緊張感の無さで、キジマには完全に顔を覚えられている。

あの時マスクひとつあれば、
現状は大きく違っていたかもしれない。

今になったところで、後の祭りだった。
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