第3章 痛みと引き換えに
柚葉は、突拍子もない事を言い出した。
兄さんが見つかるまで一緒にいる、と。
現在進行形でもたくさん迷惑かけたのに、これは僕の問題なのに。
…柚葉は、どうして。
「…どうして、?」
「私が、リオといたいから」
「…!?な、なんで??」
また大変なことを言う。
すぐに頭が熱くなっていくのを感じた。
なんで熱いんだ。
「さみしいでしょ、リオ」
「……!」
「いや、私みたいなコミュニケーションできるのがいないと
友達出来なくて寂しいだろうからね!……あれ、リオ?」
…柚葉が思っていた寂しさの元は違う理由らしかったが、
感情の核心をかすりはっとした。
でも、本心は喉からつっかえたみたいに出てこない。
というかそもそも柚葉が僕といたい理由を聞いたのに。
柚葉もそれは分かっていたみたいで、静かに話しだした。
「ほんとは、リオが辛いかと思ったっていうか、
…リオは怒るかもしれないけど、」
遠慮がちに僕を見て、肩を縮める柚葉。
内容は分かんないけど僕を考えてくれてるなら、何も怒らない。
諭すように声をかけてあげた。
「…大丈夫だよ、怒らない。」
「…リオは、お兄さんがいなくて前より何か寂しそうだから。
本当に大事だったたった一人だけの家族だったから。
だから、私が、代わりにリオを守ってあげたい。
本当の代わりじゃない、けど、…」
最後は途切れていった、柚葉の声。
怒りなんて欠片もない。
脳裏に兄さんの大きな背中、声が浮かんで、
___『父さんと母さんの代わりに、俺がリオを守るよ』___
そして今度は、僕より小さな柚葉が同じ言葉を紡ぐ。
なんだろう。
柚葉と合わせたままの目から、
涙が溢れた。