第2章 脱獄者
____
__________
「…あ、起きた」
「…ぅ…ん………柚葉…?」
うっすら開けていく視界、
最初に映ったのは柚葉。
もう怪我の痛みはない。
でも、確か僕は路上で寝落ちたはずだった。
今僕は、やわらかい所に横たわっている。
しかも、さっきまでは夜だったのにここは眩しい位に明るい。
ここはどこなんだろう。
眠い目を擦っていると、部屋に一人の老人が入ってきた。
老人は僕の方を見て、
「目が覚めたかな」 「え…っと、はい」
誰なんだろう。
ちらりと柚葉を見る。特に分からなそうな感じはなく、
むしろこの人を知っているようだった。
僕が視線を泳がせていると、柚葉はゆっくり説明してくれた。
「まずここはあんていくっていうお店。
こちらの芳村さんがやってるの。」
この人の事だろう。
柚葉が親しげということは、
芳村さんは喰種____?
「芳村さん、“眼”を見せてあげて下さい」
柚葉が言うと、彼の細く開いた片眼の先、
喰種の証である赤い目が覗いた。
「喰、種…」
「で、意識飛んじゃったリオと私を
偶然ヨモさんが見つけてくれて、ここに匿ってくれたの」
それと、と柚葉は付け足す。
「ヨモさんはあの人。彼も喰種。怖そうだけど全然ふつうの人だよ」
言われて、部屋の隅を見る。
壁に寄り掛かって、腕を組む男の人がいた。
明るそう、とは世辞にも言い難く、
その眉間にはしわが寄っている。
強そうだなぁ、と直感で思った。
「私の店がここの方達と仲が良いから、私は知り合いだったの」
ふふん。と得意げに笑う柚葉。
またしても、彼女に救われていた。
店繋がりならなるほど、知っている訳だ。僕がこくこくと頷き、
柚葉が一通り現状の説明をしてくれた所で
芳村さんが質問をしてきた。