第2章 脱獄者
いくら負傷しているとはいえ、これでも喰種だ。
それにあの脚では追いつけないだろう。
遠ざかっていく鉄の足音を振りきる様に、夜へ紛れていく。
辺りはもう真っ暗だった。
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「…ふぅ…だいぶ走ったね…」
キジマから逃げて、かなりの距離を走った筈だ。
もうあの足音は聞こえない。
柚葉の選択は正しかった。
疲労と痛みが、いよいよ限界に達しそうになる。
ふらりと足を止め、倒れるように壁へもたれかかった。
意識がまどろんでは、無防備に眠ってしまいそうだった。
「リオ…っ、」
いきなりへたれこむ僕を見て、
柚葉が駆け寄り肩を支えてくれる。
あぁ、確か前、兄さんにもこうして肩を貸してもらったな。
_____柚葉。……兄さんと同じ温かさ。
生きた喰種の体温。
「…?リオ、?」
体のあったかさで安心してしまった僕は、
そのまままどろみに身を預けた。
「…リオ…、リオ!」
名前を呼ぶ柚葉の声は、
最後まで頭に反響していた。