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Call me. 【東京喰種 JAIL】

第2章 脱獄者





どうしてここが…!?


腹の怪我も忘れ、不安げな柚葉を後ろに隠す。

柚葉だけは、傷付けたら許さない。


「一人で逃げるとは薄情な子だねェ、リオ。悪い子だ。
 ところで後ろのは確かコクリアにいたな…友達ごっこか?」

キジマの嫌味な言い方が気に障る。
僕はきっぱりと言い放った。

「違う。お前には関係無い。」

「ほう…まぁ確かに関係無いかもな。」
「これを見ても逃げられるかな!?」


そう叫んでキジマが取り出したのは、小さな紙袋。
それを僕に投げつける。


血の滲んだ小さな紙袋。
紙の下の、ぶよぶよした感覚。


小振りなふたつの、 “あれ”。


「っ、う…うぁあ…あ…!」


「自分がジェイルだの一点張りだったからねェ。全くの “聞く耳持たず” だった。だからそんな耳、いらないだろうと思ってね」

「なんで…なんでこんな…!!…」

紛れもない、それは “兄さん” の一部だったもの。
かたち大きさは2つに大差なく、手に乗るサイズの耳。


僕を脅迫するには十分な材料だった。


「さぁこっちに来い!ジェイル!君が来れば、兄を解放してやろう」
「…!」


僕が行けば、兄さんは解放される?

確かにこれは、間違いなく兄さんのもの。

簡単に信用していいのか。
言い寄るキジマに、足元がぐらついた。


そこに黙って僕らのやりとりを見ていた
柚葉が、服の裾を引いた。

「…逃げよう。あの捜査官おかしい」「どうして、?」

「ああしてリオを連れて行っても、お兄さんを解放させられる確信はない。
戻ったとしても、リオがいないんじゃ
 意味ないよ。 …それに」

「また必ず助けに来るって、リオが決めたんじゃ、ないの…?」

柚葉の言うことのそれこそ正論で、
キジマに惑わされた僕を覚ましてくれた。

裾を引いたまま眉を下げて、僕を見上げる彼女の眼には、
心配と不安の色が漆黒の瞳に混濁していた。


不覚にも、綺麗だと思った。



紙袋をポケットにねじ混んで、
柚葉に頷いて見せる。


キジマに背を向けると、全速力で走り出す。


「リッ…待てジェエイルゥゥウ!!!」


覚束ない義足の足音が、矯声と共に響いていった。








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____

「ジェイル~…出ておいでェ……」

「ジェイル~……」
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